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ハタラキアリの徒然日記

働く中で気づいたことについて書くブログです。仕事での「気づき」やビジネス書の書評などを書いています。

投資銀行はプロフェッショナルではないのか?|波頭亮「プロフェッショナル原論」

波頭亮さんの「プロフェッショナル原論」によると、投資銀行家はプロフェッショナルではないようです。

著名なコンサルタントである大前研一さんは「読んだ時間の3倍考えなさい」とおっしゃっているようです。このブログの書評では、書評に加えて私が3倍考えた結果も書きます。

「プロフェッショナル原論」概要

波頭亮さんによる「プロフェッショナルとは何か」について書かれた本です。

波頭さんは元マッキンゼーのコンサルタントで、現在は自ら設立したXEEDという経営コンサルティングの会社で活躍されているようです。

プロフェッショナルの定義からはじまり、プロフェッショナルがどのような人たちで何を考えていて、仕事や私生活でどのような生活を送っているのかなどを解説しています。

仕事への取り組み方について書かれた広義の自己啓発本だと思いますが、実用的な内容も多く含まれています。

プロフェッショナル原論 (ちくま新書) | 波頭 亮 |本 | 通販 | Amazon

著者の主張

プロフェッショナルの定義

彼によると、プロフェッショナルの定義は次のようなものだそうです。

プロフェッショナルの定義として、①高度な職能、②依頼人からの問題解決、③インディペンデントという職業形態上の三要件を示し

出典:波頭亮「プロフェッショナル原論」

これだけを見ると、いわゆる「専門家」はほとんどがプロフェッショナルであるように見えます。

しかし、本文の後半に進むにしたがって、プロフェッショナルというのはより狭い意味であることが分かります。

営業をしてはならない

波頭さんによると、プロフェッショナルは営業*1をしてはいけないのだそうです。

端的に言うならば、プロフェッショナルは営業をしてはならないのである。

出典:波頭亮「プロフェッショナル原論」

営業をしてはならない理由については次のように書かれています。

プロフェッショナルの仕事の本分は公益への寄与であり、自らの収益を追求することではない。従って収益を増大させるための行為である営業活動は行わないのである。

出典:波頭亮「プロフェッショナル原論」

この定義によると、専門家の中でも自分のスキルを売るために営業をするような人たち、たとえば投資銀行のバンカーなどはプロフェッショナルではないことになります。

プロフェッショナルの報酬体系

波頭さんによると、プロフェッショナルは成功報酬を受け取らないそうです。

プロフェッショナルがクライアントから得る報酬は、パーディアム (per diem) に基づいて計算される。

出典:波頭亮「プロフェッショナル原論」

パーディアムとは、1日あたりの報酬のことらしいです。パーディアム10万円のプロフェッショナルが10日間働くと、クライアントに請求されるフィーは100万円になります。

GoogleやFacebookに勤める優れたエンジニアは、クライアントからパーディアムをもらっているわけではありません。

プロフェッショナルの定義にある「依頼人からの問題解決」ですらありません。

したがって、波頭さんの定義によるとGoogleやFacebookに勤める天才的なエンジニアはプロフェッショナルには含まれないということになります。

成功報酬型のフィー契約というのは、当初から成功しない場合もあり得ることをプロフェッショナル自らが想定しているわけであるから、プロフェッショナルが保証すべき仕事完遂の責任感が不十分だと見なされるのである。

出典:波頭亮「プロフェッショナル原論」

ヘッジファンドのファンドマネージャーなどは、運用成績に応じてフィーをもらいます。

これは成功報酬ですから、波頭さんの定義によるとアパルーサ・マネジメントやルネサンス・テクノロジーなどに勤める凄腕のファンドマネージャーはプロフェッショナルではないということになります。

私の主張

ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーに勤めるバンカーは、多くの場合でプロフェッショナルだと考えられていると思います。

GoogleやFacebookに勤めるエンジニアも、多くの場合でプロフェッショナルだと考えられているでしょう。

波頭さんによれば彼らはプロフェッショナルではないそうですが、あまり納得感はありません。

これらがプロフェッショナルになるような定義を考えてみたいと思います。

投資銀行とコンサルティング・ファームはやっぱり仲が悪い

日本国内でも「外資系投資銀行と外資系コンサルはどっちに就職すべきですか?」という議論がよく行われます。

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これは日本固有の偏差値論争というわけではありません。Googleで “Goldman Sachs vs McKinsey & Company” と検索すると無数の議論が見つかります。

投資銀行とコンサルティング・ファームは基本的に対立関係にあり、波頭さんはコンサルタントであるため、あえて投資銀行をプロフェッショナルと定義しなかったのではないかと思えます。*2

プロフェッショナルも営業をするし成功報酬をもらう

マッキンゼー以外のコンサルティングファームは営業をして案件をとってきますし、世界で最も成功しているコンサルティング・ファームの1つであるベイン・アンド・カンパニーは成功報酬を設定しています。

したがって、営業をするかどうかや成功報酬があるかどうかはプロフェッショナルであるための必要条件ではないと思われます。

このほか、波頭さんの定義によると「依頼人のために仕事をする」のがプロフェッショナルだそうですが、これも怪しいです。

GoogleでGoogleの製品を開発する天才的なエンジニアたちは、間違いなくプロフェッショナルでしょう。

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プロフェッショナルの定義

以上をふまえて、私なりにプロフェッショナルを再定義しました。

高度で専門的な属人的スキルを用いて、自律的に仕事をする人

この定義なら、波頭さんがあげていた弁護士や会計士、建築家などのほかに、GoogleやFacebookのエンジニア、投資銀行のバンカーやブローカー、プルデンシャル生命などのライフプランナーもプロフェッショナルになります。

一方で、波頭さんもプロフェッショナルとは定義していなかった、会社の管理のもとで単純労働をしている人などはプロフェッショナルにはなりません。知識や技能が高度ではないエンジニアなどはプロフェッショナルとは呼びません。

こちらのほうがシンプルで納得感がありませんか。

プロフェッショナル原論 (ちくま新書) | 波頭 亮 |本 | 通販 | Amazon

*1:カタカナで表すところのセールスのことであって、コンサーンのことではありません。「ただいま営業中」という営業はOKで、「営業マン」の営業はNGだということです。

*2:投資銀行とコンサルティング・ファームは対立関係にありますが、個人個人のバンカーとコンサルタントが対立しているわけではありません。私自身、コンサルタントになる方で仲の良いかたもたくさんおります。